書評「入門 監視」 - アプリケーションエンジニアにこそおすすめの監視入門本
もしあなたがアプリケーションエンジニアで、
- そもそも監視とは何をしているのか、ツールの解説ばかりでよくわからない
- サービスにとって必要な監視とは何であり、今の監視がどのように役立っているかを知りたい
- サービスの監視対象パラメータの追加をインフラ担当者に依頼して1日以上待っていたりする
なら、監視の入門書としておすすめします。
「入門 監視」は来週17日にオライリー・ジャパンから発売される監視の入門本です。@songmuさんからご恵投いただきました。ありがとうございます。
本書は「監視」の本です。監視と聞くと様々なツールやサービスなど、具体的な設定を思い描く人が多いかもしれません。または厄介なアラートことを思い出す(あるいは今直面されている)方もいるでしょう。「入門 監視」はサービス運用のための監視についてパターンを解説し、整理してくれる本です。
監視対象のシステムはどんどん変化していきます。ここ10年を見渡してみても、PaaSが普及しイミュータブルなインスタンスの利用者が増え、APIによるサービスの分割がより行われやすくなり、KVSやRDBの進化によりシステムアーキテクチャが変化し、新たな言語が広まり、PWAに象徴されるフロントエンドの進化がありました。「監視」は内部の変化と外部の変化に追随し、開発者と運用者が協力しなめらかに価値提供をしていく開発と運用のサイクルが普及する時代において変化を遂げました。本書は現在における監視とは何かを考える際のよき壁打ち相手となってくれるでしょう。あるいは長く監視システムの運用に努めている方々に新たな視点をもたらしてくれるかもしれません。
「入門 監視」はサービスとして何を監視すべきか?という問いかけを繰り返します。サーバ、ネットワークの基礎的なメトリクスの取得と監視といった内容に触れつつも、監視システムとして何を提供すべきかを読者に問いかけます。特に第二部監視戦略の「5章 ビジネスを監視する」「7章 アプリケーション監視」は今から監視をどのようにサービスに組み込むかを考える方々にとって大いに手助けになるでしょう。また@songmuさんによる紹介記事の「推しポイント」にもあるように、著者の主張が強めで楽しいです。入門本なので、各章のみよめばマスターできるといった類の本ではありません。例えば4章の統計入門などは基礎統計量の説明が中心ですし、6章のフロントエンド監視も実践での問題を解くための入り口を提示するにとどめています。随時参考書籍や参考リンクも挙げれらているので、深掘りしたい方はそちらも合わせて読むとより深い考察につながるでしょう。
一読後に付録Cを読むと、本書を二度味わえます。監視SaaSであるMackerelのプロダクトマネージャーをされているsongmuさんにより「では監視SaaSに何を求め、どう活用するか」「どのようにサービスの中で監視を育てていくか」という点が書かれています。今後監視SaaSがどのように進化していくかという想像を掻き立てられました。